オフィス移転や新規開業を検討している中で、B工事の費用について不安を感じていませんか。「B工事って何にこんなに費用がかかるの？」「相場はどのくらい？」「見積もりが適正か判断できない」といった疑問は、多くの企業担当者が抱える共通の悩みです。B工事は設備に関わる重要な工事でありながら、その費用体系は複雑で分かりにくいのが実情です。

しかし、その構造を正しく理解し、適切な準備をすることで、予算オーバーを防ぎ、スムーズなオフィス移転や開業を実現できます。本記事では、B工事の費用相場から具体的な内訳、コストを抑えるポイントまで、初心者の方にも分かりやすく解説いたします。

B工事の基礎知識と費用が発生する理由

B工事について正しく理解するために、まず基本的な知識から確認していきましょう。

B工事の定義とA工事・C工事との違い

B工事とは、テナントが入居する際に必要となる設備工事のうち、建物の基本構造に関わる部分の工事を指します。具体的には、電気設備、空調設備、給排水設備、消防設備などの工事が含まれます。

オフィスビルの工事は、責任範囲によってA工事、B工事、C工事の3つに分類されます。A工事は貸主（ビルオーナー）が行う建物の基本構造部分の工事、C工事は借主（テナント）が自由に行える内装工事、そしてB工事は両者の境界部分にあたる設備工事となります。

B工事の特徴は、工事の発注者は借主（テナント）であるものの、工事業者は貸主（ビルオーナー）が指定するという点です。これは、建物の安全性や設備の統一性を保つためのルールです（※1）。

なぜB工事費用が必要なのか？テナント側の責任範囲

テナントがB工事費用を負担する理由は、その工事がテナント専用の設備に関わるものだからです。例えば、オフィス内の照明設備、個別空調システム、専用の電気配線などは、そのテナント固有のニーズに応じて設置されるため、テナント側の費用負担となります。

また、既存のビルに入居する場合でも、前のテナントが使用していた設備をそのまま使用できるケースは少なく、多くの場合、新しいテナントのレイアウトや業務内容に合わせて設備の変更や追加が必要になります。

B工事費用を左右する主な要因

B工事費用は、様々な要因によって大きく変動します。主な要因として、ビルの築年数、テナントの業種、オフィスの規模、立地条件、工事の複雑さなどが挙げられます。

特に、築年数の古いビルでは既存設備の老朽化により、より多くの工事が必要になる傾向があります。また、IT企業のように電力消費が大きい業種や、飲食業のように特殊な設備が必要な業種では、費用が高くなる傾向があります。

B工事の費用相場と単価の目安

実際のB工事費用について、具体的な相場を見ていきましょう。

業種別・規模別の坪単価相場

B工事の坪単価は、一般的なオフィスで10万円から30万円程度が相場となっています（※2）。ただし、この金額は業種やオフィスの規模によって大きく変動します。

一般的な事務系オフィスより飲食業や美容業などの特殊な設備が必要な業種では、給排水設備や換気設備の工事が複雑になるため、坪単価が上がることになります。

東京都内と地方都市での費用差

地域による費用差も無視できない要素です。東京都内、特に都心部では人件費や資材費が高いため、地方都市と比較して1費用がかかることが一般的です。

ただし、地方都市でも県庁所在地などの中心部では、東京都内に近い費用水準となることもあります。

新築ビルと既存ビルでの費用の違い

新築ビルと既存ビルでも、B工事費用に差が生じる場合があります。新築ビルの場合、設備が新しく、標準的な工事で済むため、費用を抑えることができます。一方、既存ビルでは、既存設備の撤去や老朽化への対応もより、追加費用が発生することも珍しくありません。

B工事費用の詳細内訳と項目別相場

B工事費用の内訳を詳しく見ていくことで、どの部分にどの程度の費用がかかるかを理解できます。

電気設備工事の費用内訳

電気設備工事は、B工事費用の中でも大きな割合を占める項目です。主な内容として、照明設備、コンセント設備、電話・LAN配線、分電盤設置などがあります。

照明設備工事では、LED照明の設置が一般的で、坪あたり2万円から4万円程度が相場です。コンセント設備は、オフィスのレイアウトに応じて必要な箇所に設置され、1カ所あたり7000円から2万円程度の費用がかかります。

電話・LAN配線工事は、現代のオフィスには欠かせない設備で、坪あたり1万円から3万円程度の費用が必要です。分電盤の設置や電気容量の増設が必要な場合は、追加で費用がかかることがあります。

空調設備工事の費用内訳

空調設備工事も、B工事の主要な項目の一つです。個別空調システムの設置、ダクト工事、換気設備の設置などが含まれます。

個別空調システムの設置では、オフィスの規模や間取りに応じて必要な台数が決まり、3万円から6万円程度の費用がかかります。ダクト工事は、空調効率を高めるために重要な工事で、2万円から4万円程度が相場です。

換気設備は、労働安全衛生法に基づいて設置が義務付けられており、3万円から5万円程度の費用が必要です。

給排水設備工事の費用内訳

給排水設備工事は、業種によって必要な設備が大きく異なります。一般的なオフィスでは、給湯設備、排水設備、衛生設備などの工事が含まれます。

給湯設備の設置では、電気温水器や小型ボイラーの設置が一般的で、10万円から30万円程度の費用がかかります。排水設備は、既存の配管を活用できる場合は費用を抑えられますが、新設が必要な場合は坪あたり2万円から4万円程度の費用が必要です。

飲食業など、特殊な給排水設備が必要な業種では、坪あたり5万円から10万円程度の費用がかかることもあります。

消防設備工事の費用内訳

消防設備工事は、法令に基づいて設置が義務付けられている重要な工事です。火災報知器、スプリンクラー、消火器設置などが含まれます。

火災報知器の設置は、1台3万円から5万円程度の費用がかかります。スプリンクラーシステムの設置や変更が必要な場合は、坪あたり1万円から3万円程度の費用が必要です。

消火器の設置は比較的安価で、1台あたり5千円から1万円程度の費用で設置できます。

その他設備工事の費用内訳

その他の設備工事として、セキュリティシステム、インターネット回線、内線電話システムなどの工事があります。

セキュリティシステムの設置は、入退室管理システムや防犯カメラの設置が含まれ、規模に応じて20万円から100万円程度の費用がかかります。インターネット回線の引き込み工事は、10万円から30万円程度が相場です。

B工事費用を抑えるための5つのポイント

B工事費用を適切に管理し、コストを抑えるためのポイントをご紹介します。

複数業者からの相見積もり取得

B工事ではビルオーナーが業者を指定することが多いですが、複数の業者から見積もりを取得することで、適正価格を把握できます。同一条件で複数の見積もりを比較し、工事内容や費用の妥当性を検証することが重要です。

見積もり比較の際は、工事項目の詳細、使用する材料の品質、工事期間、保証内容などを総合的に評価する必要があります。

設計段階での費用最適化

オフィス設計の段階から、B工事費用を意識した計画を立てることで、大幅なコスト削減が可能です。例えば、電気設備の配置を効率的に計画したり、既存設備を最大限活用したりすることで、工事費用を抑えることができます。

設計段階では機能性と費用のバランスを考慮し、本当に必要な設備と削減可能な設備を明確に区分することが重要です。

工事スケジュールの調整による費用削減

工事スケジュールの調整により、費用を抑えることも可能です。繁忙期を避けた工事や、複数の工事を同時に進行させることで、人件費や諸経費を削減できる場合があります。

また、工事期間を適切に設定することで、追加費用の発生を防ぐことができます。

既存設備の活用

既存のビルに入居する場合、前のテナントが使用していた設備を活用できる場合があります。配管、配線、空調設備などで再利用可能なものがあれば、大幅な費用削減につながります。

ただし、既存設備の活用には安全性や法令適合性の確認が必要であり、専門家による点検が不可欠です。

補助金・助成金の活用

地方自治体や関連団体が提供する補助金や助成金を活用することで、B工事費用の負担を軽減できる場合があります。特に、省エネ設備の導入や環境対策に関する工事では、補助金の対象となることがあります。

補助金の申請には時間がかかることが多いため、早めの情報収集と申請準備が重要です。

B工事費用の見積もりで注意すべきポイント

B工事の見積もりを適切に評価するためのポイントをご説明します。

見積書の見方と確認すべき項目

見積書を受け取った際は、工事項目の詳細、材料費、人件費、諸経費の内訳を詳しく確認する必要があります。特に、「一式」として記載されている項目については、具体的な内容を確認することが重要です。

また、見積書に記載されていない工事や、将来的に必要になる可能性のある工事についても、事前に確認しておくことが必要です。

追加費用が発生しやすいケース

B工事では、工事開始後に追加費用が発生することがあります。主な原因として、既存設備の状況が想定と異なる場合、設計変更が必要になる場合、法令の改正により追加工事が必要になる場合などがあります。

追加費用の発生を防ぐためには、事前の現地調査を十分に行い、想定される問題点を洗い出すことが重要です。

業者選定時のチェックポイント

B工事業者を選定する際は、過去の実績、技術力、財務状況、保証内容などを総合的に評価する必要があります。特に、同種の業種や規模での工事実績があるかを確認することが重要です。

また、工事期間中のトラブル対応や、完成後のアフターサービスについても、事前に確認しておくことが必要です。

契約前に確認すべき重要事項

契約前には、工事内容、費用、工事期間、保証内容、追加費用の取り扱い、工事中の安全管理などについて、詳細に確認する必要があります。

特に、工事期間の延長や追加費用が発生した場合の対応方法について、契約書に明記されているかを確認することが重要です。

B工事費用に関するよくある質問

B工事費用に関してよく寄せられる質問にお答えします。

費用支払いのタイミングは？

B工事費用の支払いは、契約によって異なり、契約時に一部、工事完了時に残額を支払う形式が多いです。大規模な工事の場合は、工事の進捗に応じて分割で支払う場合もあります。

支払いスケジュールは、契約時に明確に定めることが重要です。

工事期間中の費用負担は？

工事期間中に発生する電気代や、仮設設備の費用は、契約内容にもよりますが通常テナント側の負担となります。工事が長期化する場合は、これらの費用も事前に計算に入れておく必要があります。

原状回復工事費用との関係は？

退去時の原状回復工事では、B工事で設置した設備の撤去費用が発生します。この費用は、入居時のB工事費用とは別に発生するため、長期的な費用計画を立てる際は考慮する必要があります。

税務処理での注意点は？

B工事費用は、資産計上か費用計上かによって税務処理が異なります。工事の性質や金額によって判断が分かれるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

B工事費用でお困りの際はプロに相談を

B工事には複雑なルールがあり、費用の適切な管理と削減のためには、専門家のサポートを活用することをおすすめします。

B工事の専門家に相談することで、適正価格の判断、費用削減のアドバイス、業者選定のサポートなどを受けることができます。気になることがあれば、ぜひ当社（リロケーションアドバイス）にも一度ご相談ください。豊富な実績と専門知識を活かし、お客様の費用削減と工事の成功をサポートいたします。

＜参考記事＞

※1…A工事・B工事・C工事の違いとは？オフィス移転の工事区分をまるごと解説

※2…オフィス移転にかかる費用の種類と目安｜移転を計画する際の注意点も解説